ジョージ・ウィンストンのピアノ

ジョージ・ウィンストンを例えるなら、神かなと思う。

ホトケサマではなく、キリスト教的な意味ですよ。
いや、むしろ逆にイエス・キリストのイメージが
自分にとってはジョージ・ウィンストンなのかも・・・

誠実さが取り柄の、弱々しい男。
手が大きいわけでも、指が速く動くわけでもない。
音楽理論を駆使して知性を見せびらかすわけでもない。

でも、その表現の力は、神秘的なほど絶大なのです。

パッヘルベルのカノン
Variations on the Kanon by Pachelbel



ニューエイジ系と呼ばれることの多いジョージ・ウィンストン、
アルバム『オータム』の大ヒットは、まさに伝説ですよね。
制作費数十万のシンプルな作品が、世界中で聞かれまくったこと。
いまだに秋になると天気予報のBGMにしばしば使われます。

しかし彼自身は最初からこういうことをやりたかったわけではなく、
実はジャズピアニストを目指し、挫折して、田舎に引きこもった
という経緯があるらしい。
確かに彼のジャズっぽい演奏は、善良で、毒が薄く、
力不足で面白くない、と感じてしまう。

そんな都会の競争社会から落後して、
ひとり、自然の中で音楽を探ってみました
というところが実は大正解だった・・・

映像で見るジョージは、農夫風のシャツとジーンズ姿だし、
ピアノを弾く手つきもたどたどしくて、
パッと見「これのどこがいいの」と感じるかもしれません。
この姿は、筑紫哲也のニュース番組に呼ばれたときも同様だったんだけど、
いわばミレーの絵画の登場人物を地でいっているようなものなのです。
その音楽は、聖母のように心から優しくて、
子供のように大胆に楽しくて、
生きることの真の喜びが、充ち満ちています。
耳を澄まして響きを感じてもらえれば、それを察するのは
さほど難しいことではないと思います。

ちなみに、彼のヒットアルバムが作られた1980年代前半は、
デジタル技術がスタートした頃合いなんですね。
シンセサイザーがアナログからデジタルにかわったり、
NHK-FMのコンサート中継で「PCM録音でおとどけします」といちいち説明していたり。

ジョージ・ウィンストンのピアノもその恩恵を受けていると思います。
ピュアな響きの余韻は、デジタル録音だからこその透明感。
それまでクラシックのビアノアルバムでは
ホールの残響を美しく録るということはあったと思います。
ルービンシュタインのショパンなどがそうですが。
しかし、ピアノ自体の響きを、精密に写し取ったのは、
彼のアルバムが初めてだったのかも知れません。
リンクしたライブ映像でも、最後の音の余韻が、超美しいです。

いろいろ難しいこのごろですが
破壊の後には、ピュアな誕生が続くことを願って。


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この記事へのコメント

Blue☆Wind
2011年04月02日 17:46
the placeさん、こんにちは。

ジョージ・ウィンストンて、こんな素朴な人だったなんて…( ̄□ ̄;)!!
知りませんでした。

AUTUMNのCD、大学生時代に買いました。また違う気持ちで聴いてみよう。
2011年04月04日 01:34
本当素朴な人・・・
ニュース23に出演したときも
おとなしそうにぼそぼそと、しかし妙に的確に
音楽について語っていました。

「あなたの音楽はどうしてそんなにすばらしいのでしょう」
との筑紫哲也の問いに
「いいえ。よい音楽は記録されずに消えていくものです」
と、やや自虐的に語っていたのが印象的でした。
家族のためとか、一人の想いを込めてとか、
日常の中に真の音楽は生まれ、瞬間に消えていく。
人前で演奏したり録音したりできるのは
その、ほんの一部分なんです・・・

本当にいい仕事をする人って、
笑っちゃうくらい謙虚ですね。

ちなみにこのライブ映像は
ジョージ自身が起こしたレーベル
ダンシングキャットの名の下での投稿。
じつはジョージ・ウィンストンのホームページで
映像が多数公開されていました。
だから音のクオリティもすごくいいわけです。
『サンクスギビング』の切々とした演奏もよかった。
お時間がありましたらぜひ~

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